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福岡高等裁判所 平成5年(行コ)19号 判決

福岡県大牟田市大字歴木三〇一番地

控訴人

酒見明善

右訴訟代理人弁護士

永尾廣久

中野和信

福岡県大牟田市不知火町一丁目三番地一六

被控訴人

大牟田税務署長 樋口幸三郎

右指定代理人

菊川秀子

阿部幸夫

内藤幸義

田端芳一

福岡久剛

福田寛之

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

二  被控訴人が昭和五八年二月二八日付けでした控訴人の昭和五六年分の所得税更正処分中、総所得金額五〇六六万二〇〇八円を超える部分及びこれに伴う重加算税賦課決定処分(但し、いずれも審査裁決により一部取り消された後のもの。)を取り消す。

三  控訴人のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審を通じて控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和五八年二月二八日付けで控訴人の昭和五四年分、昭和五五年分及び昭和五六年分の各所得税についてした各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分(それぞれ審査裁決による一部取消し後のもの)をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二事案の概要

本件の事案の概要は、原判決が「事実及び理由」の「第二事案の概要」の項で摘示するとおりであるから、これを引用する(但し、原判決二枚目表一二行目の「三一日付」を「三一日付け」と、同五枚目裏一二行目の「売上げ」を「売上金額」と、同末行の「基づく売上げ」を「基づいて売上金額」と、同九枚目表二行目及び同裏五行目の各「開木武利」を「開武利」と、それぞれ改める。)。

第三争点に対する判断

当裁判所は、控訴人の被控訴人に対する本件請求中、控訴人の昭和五四年分、昭和五五年分の各所得税についてした各更正処分及び重加算税賦課決定処分(それぞれ審査裁決による一部取消し後のもの)の取り消しを求める部分については理由がないので棄却すべきであり、昭和五六年分の右更正処分等の取り消しを求める請求については、総所得金額五〇六六万二〇〇八円を超える部分については理由があるので右の限度で認容すべきであるが、その余は理由がないので棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加・訂正する外は、原判決が「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」の項において説示するところと同一であるから、これを引用する。

一  原判決一〇枚目裏五行目の「結果」の次に「(原審、当審)」を、同六行目の「反する」の次に「甲六の記載部分、証人」を、同七行目の「本人の」の次に「原審、当審における各」を、それぞれ加え、同一二枚目表三行目の「以前に」を「ころに」と改め、同末行から同裏初行にかけての「によれば、」の次に「本件口頭弁論終結時における」を加える。

二  同一五枚目表九行目の「受けていないのであるから」を「受けておらず、本件全証拠によっても右主張を認めるに足りないのであるから」と、同一六枚目三行目の「認められない。」を「認められないのであるから、被控訴人の前記推計には合理性があるというべきであって、控訴人の右主張は採用できない。」と、それぞれ改める。

三  同一八枚目表三行目の「結果」の次に「(原審、当審)」を加え、同四行目から五行目にかけての「繰り返していた」から同八行目末尾までを「繰り返していたこと、控訴人は蓮尾工務店に対する建築代金を当初売上の資金から支払っていたが、その後不足したため前記借入金を借り入れたことが認められるが、右借入金のうち、右既払いの建築代金を超える部分が事業資金として使用されたことを認めるに足りる証拠はなく、右認定事実に照らせば、右借入前に事業資金として借り入れられていた資金が一時的に家屋建築資金に流用されていたものと推認すべきであり、本件借入金が実質的に事業資金に使用されたと認めることはできず、実際には全額家屋新築資金に使用されたというべきである。」と改める。

四  同一九枚目表初行冒頭から同裏二行目末尾までを次のとおり改める。

「(1) 甲三の1、2、四の一ないし12、六、九、乙五の3、控訴人の当審における供述及び弁論の全趣旨によれば、昭和四九年一二月二日控訴人は、福岡県知事から福岡県大牟田市臼井町三〇五番地(以下『臼井町の土地』という。)において高圧ガスを製造することについて許可を得たこと、臼井町の土地の所有名義人は開ミエ子であったが、控訴人は、同女の夫である開武利から右土地を借地して『酒見燃料臼井充てん場』の名称で液化石油ガスを製造していたこと、ところで、開武利は『猿渡産業』の名称でプロパンガスの小売業を営んでおり、控訴人から商品のプロパンガスを仕入れていたため、控訴人は、右土地の借地料と販売したプロパンガス代金とを相殺し、差引計算したプロパンガス残代金額を請求していたこと、前認定のとおり控訴人が法人化した酒見燃料も、昭和五八年度の税務申告において、開に対し右臼井町の土地の借地料として昭和五七年一二月から昭和五八年一月まで月額一三万円を、同年二月から同年一一月まで月額一八万七〇〇〇円を支払った旨申告しており、平成元年一月以降は開(猿渡産業)に対し、毎月販売したプロパンガス代金から二一万円(同年四月以降は消費税込みで毎月二一万六三〇〇円)を相殺して請求していること、及び開は平成六年一〇月二七日付けで係争各年分の右土地の借地料として合計四六八万円を受領した旨の領収書を再発行したことが認められる。

右認定の事実によれば、控訴人は、液化石油ガスの製造場として開から臼井町の土地を借地しており、同人に対し、借地料と販売したプロパンガス代金とを相殺する方法によって借地料を支払っていたのてあるから、右借地料は、必要経費に該当するというべきである。

(2) そして、係争各年分の右臼井町の土地の借地料は、前記のとおり酒見燃料の税務申告にかかる昭和五七年一二月分の借地料が月額一三万円であることや前記領収書の記載に照らせば、係争各年分とも月額一三万円(年額一五六万円)であると認められる。なお、控訴人は、借地料は月額一五〇万円ないし一六〇万円であった旨主張し、控訴人の原審における供述中にはこれに副う供述部分があるけれども、控訴人自身も、当審において月額一二、三万円であった旨供述している上、前記認定の事実に照らして到底採用できない。

(3) 右認定の臼井町の土地の借地料に、甲一及び弁論の全趣旨を総合すれば、控訴人の地代家賃の額は、昭和五四年分が四〇九万円、昭和五五年分が四二三万円、昭和五六年分が四三五万四五〇〇円となる。」

五  同二〇枚目裏二行目、同二一枚目表七行目の各「結果」の次にいずれも「(原審、当審)」を、同二〇枚目裏一二行目、同二一枚目裏八行目、同二二枚目表七行目、同裏初行、同一〇行目、同二三枚目表五行目、同裏二行目の各「結果」の次にいずれも「(原審)」を、それぞれ加える。

六  同二三枚目裏末行の「昭和五四年分」から同二四枚目表二行目末尾までを「昭和五四年分が七一〇一万三七六四円、昭和五五年分が六九九七万一三三〇円、昭和五六年分が七三五二万四九九一円となる。」と改める。

七  同二四枚目表五行目の「昭和五四年分」から同七行目末尾までを「昭和五四年分が二五九七万一三四九円、昭和五五年分が四一〇七万〇七九一円、昭和五六年分が三七五三万六七〇〇円となる。」と改める。

八  同二四枚目裏二行目の「結果」の次に「(原審、当審)」を加え、同行の「原告は、」から同五行目の「提示しなかったこと」までを「控訴人が昭和五六年六月ころ入院したため、被控訴人担当職員は、控訴人の事業を手伝っていた控訴人の長男を介して控訴人に対し同年四月以降の帳簿類の提示をたびたび求めたが、控訴人は昭和五七年三月ころには自分で税務申告をすることができる状態になっていたにもかかわらず、調査に応じられる状況ではないとしてこれを拒否していたこと」と改める。

九  同二四枚目裏一二行目の「被告主張のとおり」を「前記二の3記載のとおりであると」と、同二五枚目表初行の「昭和五四年」から同三行目の「となる。」までを「昭和五四年分が四一三五万二九二七円、昭和五五年分が五五五七万九三八九円及び昭和五六年分が五〇六六万二〇〇八円となる。」と、同四行目の「この各金額は、」を「昭和五四年分と昭和五五年分に関する総所得金額は、」と、それぞれ改め、同七行目の「なるのであるから、」の次に「右各年分に関する」を、同八行目末尾の次に「しかしながら、昭和五六年分に関する審査裁決における認定額(五〇九二万七八一〇円)は、右認定の総所得金額五〇六六万二〇〇八円を超過しているのであるから、同年分に関する更正処分及び重加算税賦課決定処分中、総所得金額五〇六六万二〇〇八円を超える部分は違法といわざるをえず、取り消しを免れない。」を、それぞれ加える。

第四結論

よって、これと結論を一部異にする原判決は右の限度で失当であるから、原判決を右の趣旨の下に変更することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九六条、八九条、九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷水央 裁判官 石井義明 裁判官 永松健幹)

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